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2012/02/11 (Sat)
「ルベア」
 眠っていたらしい。
 オルカーンの呼び声で目が覚めた。
「……どうした」
「気をつけて。囲まれるよ」
 低く抑えた囁き。
 ルベアは完全に目を覚ますと、剣の柄に手を添えて周りを見回した。
 レインの姿が無い。
「レインは?」
 何かの気配が近づいてくるのを感じつつ、ルベアが問う。
「……ちょっと散歩、って。追えてるから大丈夫」

 オルカーンは視線を上げると嫌そうな顔をした。
「見つかった」
 何に、とは聞かない。
 周囲の気配は囲うように近づいてきていた。
 レインがいなくて良かった、と思う。
 彼は戦闘には向かない。
 柄にかけた手に力をこめる。
「数は」
「数えられないな。細かいよ」

 さわさわと、葉ずれの音がする。
 風は吹いていない。
 不意に音が止まった。
 感じる気配が圧倒的に重くなっていく。
 排除しようとする、完全な敵意。
 神経が研ぎ澄まされていく。
 オルカーンが姿勢を低くして警戒する。
 いつでも跳びかかれる体勢だ。
 がさり、と前方の繁みが音を立て、黒い塊が向かってきた。
 居合の要領でそれに合わせて刃を滑らせる。
 と、それは瞬時に後退し、間合いから逃げた。
 僅かの明かりに見えたそれは、黒い鼬のような魔獣だった。
 大きさは拳二つ分ほど。
 確かに細かくはある。
 数は多くいたはずだ、と思った時、最初の一匹の後ろから次々と同じ形の魔獣が飛び出してきた。
 視線の先が闇色に染まっていく。
 がさりと音がして、それは横や後ろからも現れた。
「多いなぁ」
「数だけだ」
 ぼやくオルカーンに短く応え、ルベアは剣を構えた。

 思ったより速かった。
 ただ、殺傷能力は低そうだ。
 攻撃を受けても大怪我にはならないだろうが、数だけは厄介だった。
 めんどくさいなと思いつつ、一歩、前に足を進める。
 それを合図にして魔獣は一斉に飛び掛ってきた。
 間合いに入ったものから斬り伏せていく。
 斬られたそれは声もなく塵となって消えていった。
 その様をのんびり見る暇も無く、片端から斬っていくが、彼らは仲間が斬られても動揺もせず、襲い掛かってくる。
 変だ、と思った時、背後にいたはずのオルカーンはかなり離れた位置にいて、そして魔獣の数は減りもしていなかった。
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