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2012/02/11 (Sat)
 かなりの数を斬り捨てた。
 何処から沸いてくるのか。
 段々息があがってきた。
 黙々と、こなす作業のように襲われては斬り、斬っては襲われと繰り返すうちに思考が単調になっていく。
 気がついたときには周囲を囲む輪は狭まり、そして周りの魔獣が一斉に飛び掛ってきて。

「光を!」

 聞きなれない、高い声が響いた。
 瞬間、目も眩むほどの光がその場を覆った。
 思わず腕で目を庇う。
 光が消え、閉じていた目を開くと、あれだけ数のいた魔獣は一匹残らずいなくなっていた。
 オルカーンが傍らに走り寄ってくる。
 剣は抜き身のまま、周囲を見回す。
 がさりと大きな音がして、そちらに刃先を向けた。
 これ以上何が出てくるのか。
 派手な音を立てて草むらを掻き分け、出てきた物は。

 こげ茶色の髪を耳の上で束ねた、少女だった。
 ルベアは刃先を突きつけたまま、驚きに目を見開いた。
 少女は憮然とした表情で近くまで来ると、薄い青の瞳を細めて言った。
「いつまでか弱い女の子に向けて刃を向けているんですの。もう何も居ないのだから、仕舞った方が宜しくてよ」
 少女特有の、細く、高い声。
 だがその声には凛とした響きがあった。
「全く貴方方は。あんなもの相手に剣や牙で敵うと思ってるんですの? 呆れて物も言えませんわ」
 ゆっくりと剣を鞘に戻すルベアに、少女は腰に手を当てて憤慨しているようだ。
 馬鹿にしているようにも聞こえるのだが。
 と、少女の背後からレインが現れた。
「はーやっと追いついた……。速いよー」
「貴方が遅いんですわ」
 肩で息をするレインを横目で見て少女が吐き捨てる。

「君誰?」
 オルカーンが不思議そうに聞く。
「助けてもらっておいて礼の一つもないの? それに、貴方方はわたくしを捜していたのではなくて?」
「じゃあ貴方がシェンディル?」
「そうよ。貴方、わたくしを『視て』いたでしょう? それで何でわからないの」
 この少女が?
 そう思うと同時に、名前しか知らなかったことに今更気づく。
「助けてもらった、というのは?」
 袖を叩いて汚れを落としながら、ルベアが問う。
「先程の魔獣のことですわ。あれには物理攻撃が効きませんもの。光を当てるのが一番です」
 そう言って、少女、シェンディルは掌を差し出すように掲げた。
 たおやかな、少女の手。
 その手の先から、丸い光の珠が浮かび上がった。
 それは瞬く間に拳ほどの大きさになり、周囲を照らし出した。
「わたくし暗いのはあまり好きではありませんの」
 にこりと笑うとシェンディルは背を向けて数歩歩き、肩越しに振り返った。
「もう少し行くと休める場所がありますわ」
 ついて来い、ということらしい。
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