小説用倉庫。
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放置していた荷物をそれぞれ持つと、誰からとも無く顔を見合わせてから、移動していく光を追った。
「……君は、何故ひとりでこんな場所に?」
前を行く小さな背中に追いついてから、ルベアが聞いた。
「……大した事じゃありませんのよ。ただ、嫌な予感がしたものだから、占ってみようとしたのだけれど上手くいかなくて、最も力の満ちるこの場所に来ただけですわ」
「占いは上手くいったの?」
レインが問うと、シェンディルは少し歩調を弱めた。
「いいえ。上手くいきませんでしたわ。何度やっても同じ……真っ暗で何も見えませんの」
「んー、ルシェイドに聞いてみるとか」
魔法関係だったらと、この間知り合ったばかりの相手の名前を告げると、シェンディルは驚いたようにレインを見た。
「彼を知っているんですの……。……いいえ。彼は調停者ですもの。聞いたところで答えてはくれませんわ」
言い切ったその表情には、何処か諦めにも似た色があった。
「どういうことだ?」
「彼は世界の運命を調停する者ですの。人々の営みは彼には意味の無いものですのよ」
レインが不思議そうに首を傾げる。
「そうかなぁ。そうは見えなかったけど」
シェンディルは俯き加減に足を速めた。
不意にぴたりと足を止めると、彼女は小さく呟いた。
「わたくしは昔彼の話を聞いたときは純粋に憧れましたわ。羨ましい、と思いました。だって現存する全ての魔法が使えるんですのよ? けれどそれに伴うものも聞いてしまってからは、そうは思わなくなった……。わたくしだったら、あんなふうに振舞えませんわ。きっと……狂ってしまいますもの」
拳を握り締めて俯くシェンディルにどう声をかけたら良いのか分からずにただ見つめていると、慌てたように振り返って笑った。
「嫌だわわたくしったら。初対面の方に失礼ですわね。忘れてくださる?」
先程までの暗い口調ではない、不自然に明るい声でシェンディルは言い、さぁ、着きましたわと前方を示した。
示された先には小ぢんまりとしたテントが張ってあった。
「さぁ、お入りになって」
そう言って、シェンディルは躊躇うことなくテントの中へ消えた。
ルベア達は互いに顔を見合わせ、レインが困ったように眉を寄せてから、テントの中へ入った。
オルカーンがそれに続き、最後にルベアが周囲を一瞥してから入った。
テントの見た目は子供が三人入れば窮屈そうなほどの大きさだった。
中に入った途端、驚きに目を見開く。
子供が三人どころか十人は入れそうな空間が其処にあった。
天井も高い。
テントの中、というより何処かの室内のようだった。
「座ってくださる? お客様が来る予定なんて無かったものだから、椅子は無いのだけれど」
床にいくつか置かれたクッションを示しながら、シェンディルが声をかける。
其処へ移動するまでに彼女はテキパキとお茶の支度を始めていた。
「貴方はカップ? それともお皿かしら?」
振り返ってオルカーンに問う。
オルカーンは一瞬驚いたように動きを止め、レインの傍らに腰をおろしながら答える。
「お皿が良いな」
「分かりましたわ」
程なく、香ばしいお茶の香りが部屋に満ちた。
「どうぞ」
「わぁありがとうー」
嬉しそうにレインが言い、口に含む。
「美味しい」
皆でお茶を飲んで一息つく。
「……君は、何故ひとりでこんな場所に?」
前を行く小さな背中に追いついてから、ルベアが聞いた。
「……大した事じゃありませんのよ。ただ、嫌な予感がしたものだから、占ってみようとしたのだけれど上手くいかなくて、最も力の満ちるこの場所に来ただけですわ」
「占いは上手くいったの?」
レインが問うと、シェンディルは少し歩調を弱めた。
「いいえ。上手くいきませんでしたわ。何度やっても同じ……真っ暗で何も見えませんの」
「んー、ルシェイドに聞いてみるとか」
魔法関係だったらと、この間知り合ったばかりの相手の名前を告げると、シェンディルは驚いたようにレインを見た。
「彼を知っているんですの……。……いいえ。彼は調停者ですもの。聞いたところで答えてはくれませんわ」
言い切ったその表情には、何処か諦めにも似た色があった。
「どういうことだ?」
「彼は世界の運命を調停する者ですの。人々の営みは彼には意味の無いものですのよ」
レインが不思議そうに首を傾げる。
「そうかなぁ。そうは見えなかったけど」
シェンディルは俯き加減に足を速めた。
不意にぴたりと足を止めると、彼女は小さく呟いた。
「わたくしは昔彼の話を聞いたときは純粋に憧れましたわ。羨ましい、と思いました。だって現存する全ての魔法が使えるんですのよ? けれどそれに伴うものも聞いてしまってからは、そうは思わなくなった……。わたくしだったら、あんなふうに振舞えませんわ。きっと……狂ってしまいますもの」
拳を握り締めて俯くシェンディルにどう声をかけたら良いのか分からずにただ見つめていると、慌てたように振り返って笑った。
「嫌だわわたくしったら。初対面の方に失礼ですわね。忘れてくださる?」
先程までの暗い口調ではない、不自然に明るい声でシェンディルは言い、さぁ、着きましたわと前方を示した。
示された先には小ぢんまりとしたテントが張ってあった。
「さぁ、お入りになって」
そう言って、シェンディルは躊躇うことなくテントの中へ消えた。
ルベア達は互いに顔を見合わせ、レインが困ったように眉を寄せてから、テントの中へ入った。
オルカーンがそれに続き、最後にルベアが周囲を一瞥してから入った。
テントの見た目は子供が三人入れば窮屈そうなほどの大きさだった。
中に入った途端、驚きに目を見開く。
子供が三人どころか十人は入れそうな空間が其処にあった。
天井も高い。
テントの中、というより何処かの室内のようだった。
「座ってくださる? お客様が来る予定なんて無かったものだから、椅子は無いのだけれど」
床にいくつか置かれたクッションを示しながら、シェンディルが声をかける。
其処へ移動するまでに彼女はテキパキとお茶の支度を始めていた。
「貴方はカップ? それともお皿かしら?」
振り返ってオルカーンに問う。
オルカーンは一瞬驚いたように動きを止め、レインの傍らに腰をおろしながら答える。
「お皿が良いな」
「分かりましたわ」
程なく、香ばしいお茶の香りが部屋に満ちた。
「どうぞ」
「わぁありがとうー」
嬉しそうにレインが言い、口に含む。
「美味しい」
皆でお茶を飲んで一息つく。
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