小説用倉庫。
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それから三日ほど経った。
つい先ほど目を覚ましたルベアは、体のふらつきを抑えながら廊下へと向かった。
扉を抜けると、店の方からディリクが顔を出した。
「起きたか」
声を出そうとして、一度咳き込む。
「……すまん。占領していたようだ」
少し掠れた声で言うと、ディリクは首を横に振った。
「店に居たから、平気だ」
ふと、静かなことに気づく。
「レインとオルカーンは」
「中庭に居る」
指で示すと、彼はそのまま店の中に消えた。
ルベアはディリクの消えた跡を暫く見ていたが、徐に踵を返すと中庭に向かった。
足は少しふらつくが、頭ははっきりしている。
扉を開ける。
眩しさに一瞬目が眩み、強い光は今が朝方なのだと感じさせた。
「あ!」
驚いたように叫ぶ、聞きなれた声がした。
目の上に手を翳しながら中庭を見ると、レインとオルカーンがこちらに駆けてくるところだった。
「起きたんだね!」
「ずっと寝たままだったよ」
「……あぁ」
二人に低く呟き、きょろ、と中庭を見回す。
他に人影は無い。
「あの二人は?」
問うと、レインが首を傾げて答えた。
「ヴィオルウスと、アィル?」
頷くと、オルカーンが帰ったよ、と言った。
そうか、とドアに背を預ける。
上半身が陰に入った。
少し暗くなった視界を瞬きで慣らし、レインに視線を向ける。
「お前、記憶は?」
レインは一瞬きょとんとしてから、首をかしげた。
「戻ってないのか?」
「うーん。良くわかんない」
怪訝に思ってオルカーンを見ると、尻尾をぱたりと振ってその場に伏せた。
「どっちなんだ」
「力は……使えるみたいなんだけど……、記憶とかはあんまり覚えてないっていうか」
「其処まで自我が確立していなかったからな。ただ覚えていないだけだろう」
不意に低い声が響いて、ルベアは驚いて振り返った。
音もさせずに、ディリクが立っていた。
手には盆を持っている。
それをルベアに向けながら、彼は静かに口を開いた。
「……お前が、こっちへ来たのは物心つくかつかないかくらいの時だ。覚えていなくても不思議は無い」
「……? じゃあ何で魔法は使えるの?」
きょとんと首を傾げてレインが問う。
ルベアはディリクから盆を受け取った。
その上には一人前の食事が載っていた。
「魔法というのは魔族にとって呼吸をするのと等しいほどに簡単なものだ。だが意思がなければ使えない。お前のそれは」
一旦言葉を区切り、ディリクはレインを指差す。
「その意思ごと消すようなものだ。それが戻ったから、また魔法が使えるようになったんだ」
言い終えて、ため息を吐く。
珍しい長口上に疲れたかのように。
「意思……」
分かったような、分からないような、そんな表情でレインが俯く。
「まぁ使えるって知らなかったら使おうとは思わないしね」
ぽつりとオルカーンが呟き、レインがなるほど、と手を打った。
「……そういうことだ。さっさと食え。冷めるぞ」
後半はルベアに言い、ディリクは踵を返した。
これを届けに来ただけのようだ。
つい先ほど目を覚ましたルベアは、体のふらつきを抑えながら廊下へと向かった。
扉を抜けると、店の方からディリクが顔を出した。
「起きたか」
声を出そうとして、一度咳き込む。
「……すまん。占領していたようだ」
少し掠れた声で言うと、ディリクは首を横に振った。
「店に居たから、平気だ」
ふと、静かなことに気づく。
「レインとオルカーンは」
「中庭に居る」
指で示すと、彼はそのまま店の中に消えた。
ルベアはディリクの消えた跡を暫く見ていたが、徐に踵を返すと中庭に向かった。
足は少しふらつくが、頭ははっきりしている。
扉を開ける。
眩しさに一瞬目が眩み、強い光は今が朝方なのだと感じさせた。
「あ!」
驚いたように叫ぶ、聞きなれた声がした。
目の上に手を翳しながら中庭を見ると、レインとオルカーンがこちらに駆けてくるところだった。
「起きたんだね!」
「ずっと寝たままだったよ」
「……あぁ」
二人に低く呟き、きょろ、と中庭を見回す。
他に人影は無い。
「あの二人は?」
問うと、レインが首を傾げて答えた。
「ヴィオルウスと、アィル?」
頷くと、オルカーンが帰ったよ、と言った。
そうか、とドアに背を預ける。
上半身が陰に入った。
少し暗くなった視界を瞬きで慣らし、レインに視線を向ける。
「お前、記憶は?」
レインは一瞬きょとんとしてから、首をかしげた。
「戻ってないのか?」
「うーん。良くわかんない」
怪訝に思ってオルカーンを見ると、尻尾をぱたりと振ってその場に伏せた。
「どっちなんだ」
「力は……使えるみたいなんだけど……、記憶とかはあんまり覚えてないっていうか」
「其処まで自我が確立していなかったからな。ただ覚えていないだけだろう」
不意に低い声が響いて、ルベアは驚いて振り返った。
音もさせずに、ディリクが立っていた。
手には盆を持っている。
それをルベアに向けながら、彼は静かに口を開いた。
「……お前が、こっちへ来たのは物心つくかつかないかくらいの時だ。覚えていなくても不思議は無い」
「……? じゃあ何で魔法は使えるの?」
きょとんと首を傾げてレインが問う。
ルベアはディリクから盆を受け取った。
その上には一人前の食事が載っていた。
「魔法というのは魔族にとって呼吸をするのと等しいほどに簡単なものだ。だが意思がなければ使えない。お前のそれは」
一旦言葉を区切り、ディリクはレインを指差す。
「その意思ごと消すようなものだ。それが戻ったから、また魔法が使えるようになったんだ」
言い終えて、ため息を吐く。
珍しい長口上に疲れたかのように。
「意思……」
分かったような、分からないような、そんな表情でレインが俯く。
「まぁ使えるって知らなかったら使おうとは思わないしね」
ぽつりとオルカーンが呟き、レインがなるほど、と手を打った。
「……そういうことだ。さっさと食え。冷めるぞ」
後半はルベアに言い、ディリクは踵を返した。
これを届けに来ただけのようだ。
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