忍者ブログ
小説用倉庫。
HOME 294  295  296  297  298  299  300  301  302  303  304 
2024/11/22 (Fri)
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2012/04/06 (Fri)
 思考は、オルカーンの唸り声で途切れた。
 はっとして振り返る。
 凝ったような闇が、其処に在った。

 ――……何?

 半ば混乱した頭で呟く。
 ずるり、とその闇は黒色の獣を吐き出した。
 開かれた獣の目を見て、レインは意識が途切れそうになった。
 周囲を睨みつけるかのような、赤い目。
 その獣からは容赦なく憤怒の感情が向けられている。
 けれど、何故だろう。

 どうして、これがルベアに似てるなんて思ってしまうんだろう!

『レインッ! 呑まれるな!』
 オルカーンの鋭い声が飛ぶ。
 レインははっとして、どきどきする心臓を押さえた。
 そうだ、違う。
 これは彼ではない!
 確信と共に自分に言い聞かせた途端、獣の姿は薄れ、拡散するように闇へと溶けた。

「何だよォ。俺の、邪魔をすんのかァ?」
 どこか、間延びした声が響く。

 ぎくりとして目を凝らすと、獣が消えた辺りにぼんやりと何かが形作られようとしていた。
『レイン、あんなのに構うな。早く行こう』
 静かに言われたことに、レインが驚いてオルカーンへ視線を向ける。
 オルカーンは呆れたような視線を向けて言った。
『何しに此処へ来たか忘れたの? この中じゃこっちが不利なんだよ』

 ――そ、そうだね……。

 レインは慌てて頷くと、ルベアの身体を引っ張った。
 力を失った身体はぐったりとして、重い。
 ふと、視界の隅できらりと何かが光った。

 ――?

 不思議に思って、目を凝らす。
 それは何かの糸のようだった。
 見落としそうなほどに細い糸が、微かに光を放ちながら其処にあった。
 良く見れば、それはルベアの身体から目の前の闇へと繋がっているようだった。
『レイン! 何やって……』
 オルカーンが腹立たしげに振り返る。
 瞬間、何かに突き動かされるようにその糸を引っ張っていた。
 するすると殆ど抵抗を感じずに手繰り寄せられる。
 これが何を意味しているのか分かっていなかった。
 けれど、ほんの微かに抵抗を感じた時、闇が動揺するように揺れた。
「何してるんだよ……。お前ェ!」
 苛立たしげな声に、思わず肩がぴくりと揺れた。
 けれど糸は離さない。
 引き寄せた糸は撓むことなく、吸い込まれるようにルベアの中に消えていく。
 闇はそれ以上近づいてこない。

 否。
 近づけないのだ。

 守るように、遮るようにオルカーンが間に立っている。
 その身体からは、他を圧倒するほどの覇気が溢れていた。
Comment
Name
Title
Color
Mail
URL
Comment   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
Password
HOME 294  295  296  297  298  299  300  301  302  303  304 
HOME
Copyright(C)2001-2012 Nishi.All right reserved.
倉庫
管理者:西(逆凪)、または沖縞

文章の無断転載及び複製は禁止。
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
最新記事
[長編] Reparationem damni  (03/12)
[長編] Reparationem damni  (03/12)
[長編] Reparationem damni  (10/19)
[長編] Reparationem damni  (10/19)
[長編] Reparationem damni  (09/07)
忍者ブログ [PR]
PR