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2012/04/06 (Fri)
 暗い。
 上下左右の無い暗闇で、レインは首をめぐらせた。
 何も見えない。
 けれど。
 何だろう。
 この感じ。
 両の手のひらから暖かいものが流れてくる。
 それに力づけられながら、レインは暗闇を彷徨う。

『レイン』
 耳慣れた、嗄れ声に呼ばれて振り返る。
 少し反響はしていたけれど、それが背後から響くものだと分かった。
 後ろからはオルカーンが走ってきた。
 どうやって入ってきたんだろうこの暗闇に。
 首をかしげながら、けれど気配に偽りは無い。
『早く、探そう。長く居るのは良くない気がする』
 オルカーンの言葉に同意して、改めて周りを見回す。
 闇は相変わらず深い。

 ――何処へ、行けば良い。

 必死に目を凝らす。
 見えるのは闇ばかりだ。
 その時不意にオルカーンが顔を上げた。
 何かを探るように耳を傾ける。

 ――どうしたの?

『向こう……だと思うんだけど、……変な感じがする』
 少し忌まわしげに鼻を鳴らし、伺うようにレインを見上げる。
『行く?』

 ――行くよ。他に、ないでしょ?

 それもそうだと、オルカーンが妙に人間くさい動作で首をすくめた。
 レインは走るというよりも飛ぶように闇を進んでいく。
 そのすぐ傍らを、オルカーンが付き添った。
 どのくらい進んだのかは判然としなかったが、そんなに長い時間は移動していないと感じていた。
 前方で、闇が揺れた。
 歩調を緩め、目を凝らす。
 足元と思しき辺りに、黒い何かの塊が見えた。
 先に、オルカーンが走り出す。
 そのものが見えたとき、レインも速度を上げた。

 ――ルベアッ!!

 声はほとんど響かないので闇が震えることは無かったが、悲鳴じみたそれはその場に居る者の意識に響いた。
 塊は探していた人影。
 けれど、それはぴくりとも動かなかった。
 先にたどり着いたオルカーンが、纏わりつく闇を蹴散らすように牙を剥いて唸り、虚空に爪を立てた。
 追いついたレインがぐったりとした身体を揺すろうと肩に手を伸ばし、息を呑んだ。
 これは本当に彼なのだろうか。
 きつかった眼差しは虚ろに開かれ、意識はまったく感じられない。
 まさか、と思った。
 けれどそれは一瞬で、すぐに息があることに気づいた。
 気を失っているのか。
 それとも、『喰われた』か。
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