小説用倉庫。
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「……良い。……構うな」
掠れた声が耳に届いた。
ルベアが、緩慢な動作で起き上がろうとしていた。
「けど……!」
言い募ろうとするレインを黙らせ、視線をディリクに向ける。
其処に何かを見て取ったのか、ディリクは浅く頷くと視線を上げた。
「……良いんだね」
ヴィオルウスの囁くような問いに頷いて返す。
瞬間、何も無い空間からどろりと闇が溢れた。
それは人の影のような形を模していたが、所々が溶けているような、不完全な姿をしていた。
返せ、とそれはわめいた。
陰鬱に響く声で。
「彼は君のものではないよ」
凛とした声と同時に闇は押しつぶされた。
音は、しなかった。
それは無音のまま凝固し、圧縮され、消えた。
しん、と沈黙が落ちた。
暫く時間が経ってから、オルカーンがぱさりと尻尾を振った。
それを視界の端に受け、レインが半ば呆然と口を開く。
「いなくなった、の?」
ディリクが空気を嗅ぐように僅かに顔を動かし、一言呟いた。
「もういない」
「死んだの?」
「手応えはあったよ」
「そのようだ」
それを聞いた途端、レインの全身から力が抜けた。
ルベアが呻いて、身体を起こそうとする。
「……っ、……」
異変に気づいたアィルがルベアの手を取った。
「お前……手が」
「あぁ、……喰われた」
淡々と言われた言葉に、レインが身体を強張らせる。
「……利き腕じゃないだけましだ」
ルベアは苦笑して、アィルの持つ右手へと視線を走らせた。
その腕は弾力を失い、石のように硬くなっていた。
「……でも、無事で――……」
よかった、と続けようとして、腕に増した重みに視線を向ける。
目を閉じて、ルベアがもたれ掛かっていた。
「……ルベア?」
ぽつり、と呟く。
不安そうにオルカーンが顔を覗き込む。
ディリクが素早く、何かを唱えながら手を取った。
暫くあちこち触れた後、短く息を吐いて顔を上げた。
「気を失っているだけだ。問題ない」
その言葉に、その場の全員がため息をついた。
「何だ、驚かせるなぁ」
言って、アィルが表情を崩した。
「とりあえず、無事、なんだよね」
レインが確認するように呟いて、後ろのベッドに倒れこんだ。
掠れた声が耳に届いた。
ルベアが、緩慢な動作で起き上がろうとしていた。
「けど……!」
言い募ろうとするレインを黙らせ、視線をディリクに向ける。
其処に何かを見て取ったのか、ディリクは浅く頷くと視線を上げた。
「……良いんだね」
ヴィオルウスの囁くような問いに頷いて返す。
瞬間、何も無い空間からどろりと闇が溢れた。
それは人の影のような形を模していたが、所々が溶けているような、不完全な姿をしていた。
返せ、とそれはわめいた。
陰鬱に響く声で。
「彼は君のものではないよ」
凛とした声と同時に闇は押しつぶされた。
音は、しなかった。
それは無音のまま凝固し、圧縮され、消えた。
しん、と沈黙が落ちた。
暫く時間が経ってから、オルカーンがぱさりと尻尾を振った。
それを視界の端に受け、レインが半ば呆然と口を開く。
「いなくなった、の?」
ディリクが空気を嗅ぐように僅かに顔を動かし、一言呟いた。
「もういない」
「死んだの?」
「手応えはあったよ」
「そのようだ」
それを聞いた途端、レインの全身から力が抜けた。
ルベアが呻いて、身体を起こそうとする。
「……っ、……」
異変に気づいたアィルがルベアの手を取った。
「お前……手が」
「あぁ、……喰われた」
淡々と言われた言葉に、レインが身体を強張らせる。
「……利き腕じゃないだけましだ」
ルベアは苦笑して、アィルの持つ右手へと視線を走らせた。
その腕は弾力を失い、石のように硬くなっていた。
「……でも、無事で――……」
よかった、と続けようとして、腕に増した重みに視線を向ける。
目を閉じて、ルベアがもたれ掛かっていた。
「……ルベア?」
ぽつり、と呟く。
不安そうにオルカーンが顔を覗き込む。
ディリクが素早く、何かを唱えながら手を取った。
暫くあちこち触れた後、短く息を吐いて顔を上げた。
「気を失っているだけだ。問題ない」
その言葉に、その場の全員がため息をついた。
「何だ、驚かせるなぁ」
言って、アィルが表情を崩した。
「とりあえず、無事、なんだよね」
レインが確認するように呟いて、後ろのベッドに倒れこんだ。
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管理者:西(逆凪)、または沖縞
文章の無断転載及び複製は禁止。
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