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2012/04/09 (Mon)
 ふと気がつけば、糸は流れるようにルベアに向かっていた。
 手繰り寄せる力は必要ないほどに。
 ほんの少し、ほっとして力を抜いたところで糸がぴたりと止まった。

「……よくも。ゆっくり喰らってやろうと思ってたのにさァ!」

 ぶつん、と糸が切れた。
 先を闇に残したまま、中ほどで。
 切れてはならないものだったのに!

 一際高く、オルカーンが唸り声を発した。
 それに被せるように、密やかな笑い声が響く。
 切られた糸はもう見えない。
 全てルベアの中に納まったようだ。
 闇に取られた分を除いて。
 顔を見ると、目は硬く閉じられていた。
 他に動きは、無い。
『レイン!』

 ――うん……!

 頷いて、ルベアを抱えあげる。
 力が足りなくて引きずる形になったが、何とか移動はできそうだ。
 歩き出そうとした時、不意に引っ張られる感覚があった。
 ぎくりとして抵抗しようとしたが、それが覚えのある人物の力だとすぐに気づいた。
 ディリクだ。

 ――オルカーン!

 叫んで、手を伸ばす。
 意図を察した彼がレインに飛びつく。
 それとほぼ同時に、レインは引っ張る力に身を任せた。
 景色が無いので分かりにくいが、目の前にあった気配は驚くほどの速さで遠ざかっていった。
 声が聞こえた気もしたが、もはや聞き取れるほどの距離ではないようだった。
 落とさないようにとしっかりルベアとオルカーンを掴み、きつく目を閉じる。
 意識がぐらぐらとして吐きそうだった。

 不意に闇が晴れた。
 眩しさにはっとして目を開けると、心配そうなヴィオルウスの顔が見えた。
 斜めに倒れた身体を支えていたのはディリクだった。
 しっかりと支え、床に倒れるのを防いでくれている。
 腕を見下ろし、ルベアとオルカーンの姿を見て安堵する。
 どうやら落とさずにすんだようだ。

「潰せ」
「駄目だ!」
 冷やりとしたディリクの声が聞こえ、反射的にレインは叫んでいた。
 驚きと怪訝さが混じった表情で、振り返ってくる二人に、レインが首を振る。
 アィルはただじっと、成り行きを見ていた。
「何故だ」
 険しい声。
「……駄目だ、だって、あの中には……」
 切り残された、ルベアの。
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