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2012/02/05 (Sun)
「ねぇねぇ聞いてー!」

 ばたんと勢いよく診療所の扉が開かれる。
 そのうち壊れるんじゃなかろうかと要らぬ心配をするが、当人たちにとってはどうでもいいことらしい。
 転がるように入ってきた東旭の後ろから、苦笑しながら酒星が入ってくる。

「どうした、東旭」
「名前考えたんだ! 樹雨っていうの! どう?」
 凄くにこやかに返答を求めてくる。
 半ば呆然と見ていると、東旭がベッドの上に半身を起き上がらせた彼に気づいた。
「あ、起きたんだね! ねぇ名前、樹雨ってどう?」

「……え……」
 困ったように呟く彼に、酒星が気づいて東旭をたしなめる。
「東旭……突然にどうって言われても彼が困るだけでしょう」
「そう? うーんでもいい名前だと思うんだけどなー」
 腕組みをして天井を仰ぐ。

 それを見て冬杣が苦笑し、彼の方に視線を向けた。
「つまりな、呼び名を樹雨にしたらどうか、ということなんだよ」

 説明すると、よくわからないのか目をしばたたかせている。
「名を変えろと、いうことですか……?」
「うん? いや、違うよ。この島でのそれぞれの呼称になるのさ。この島にいるみんな、ふたつ名を持ってる」
 薄氷がにやりと笑って説明する。
「……そう、ですか……」
「樹雨って、駄目かな……?」
 東旭が上目遣いに彼を見る。
 彼は一瞬きょとんとして、それからふわりと微笑んだ。
 柔らかな笑み。

「……良いですよ」
 肯定すると、東旭はぱぁっと花が咲くように笑った。

「ありがとう! あたし東旭っていうの!」
「私は冬杣という」
「俺、踏青な!」
「薄氷だ。よろしくな、樹雨」
「よろしく……酒星ッて言います」
 順に名を名乗ると、樹雨は微笑を持ってそれに応える。

 名前だけの自己紹介はこれで終わりだ。
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