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2012/02/05 (Sun)
「ところであんたなんで海流れてたんだ?」
 聞くと、樹雨は一瞬目を伏せた。
「……人を、探しているんです」
「どんなひと?」
「名は?」
「……名前はマルヴェーリ=レイジヴァルグ。私と同じような金の髪をしています」
 拳を握り締めて言う。
 なんだかつらそうだ。
「私はレイリジオーゼ神聖国からきました。彼に、会うために……」

 少し疑問に思って首を傾げると、皆も良くわからないという顔をしていた。
「レイリジ、オーゼ……? どこそれ?」
 難しい顔をして東旭が聞く。
「レイリジオーゼ神聖国です。東の……」
「東にあるのはトゥーディス大陸だが……国はないぞ」
「え、そんなはずは……」
 困惑したように樹雨が呟く。
「3大大陸を統括する王としてシェスタ王家がいるが……国はないはずだ」
 冬杣が断言する。
 大陸はすべて町や村からなっており、それぞれ統治する者はいるがシェスタ王家が一番上の位置にいる。俗にいう王制制度だ。
「それに神聖国、っていうのもあんまり聞かないしなぁ」
 呟くと、冬杣も無言で頷く。

 と、酒星がごそごそと棚から何か取り出した。
「これ、世界地図なンですけど」
 そう言って樹雨の膝の上に広げたそれは、航海の時に良く使う地図だった。

「ここがヴァイサーシアー大陸。ここに王都があります」
 つと、真ん中の一番大きな大陸を指差す。
「こっちがユーディリス大陸だな。魔法使いが多いことで有名だけど」
 左にある細長い大陸。
「そしてこれが東の大陸……トゥーディス大陸だ」
「ここ、今いるとこ」
 冬杣が右側の大陸を示し、東旭がヴァイサーシアーよりも左斜め上に位置する島を指差す。
「シャイレア島って言うんですがね……」
「聞いたことないの?」
 真剣に地図を見つめて黙っている樹雨に、東旭が不安そうに聞く。

 数秒のち、樹雨は溜息をついて首を左右に振った。
「……わかりません。今まで聞いたこともない」
 静かに告げる。

「どういうことだ?」
 沈黙が落ちた。
 その重苦しい静けさを破ったのは冬杣だ。

「今日はここまでにしよう。目が覚めたばかりでいろいろな話をすると身体に良くない。……顔色もだいぶ悪くなってきたようだし」
 よく見ると青ざめているのがわかる。
 皆が顔を合わせた。
「……」
「……それじゃ、行くかー」
「ちゃんと、寝るように、いいね。食事は後で持ってきてあげるよ」

 釘を刺し、診療所を後にする。
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